翻訳:アルジャジーラ - 「ウォール街を占拠せよ」東京に飛び火
「ウォール街を占拠せよ」東京に飛び火
Wall Street protests echo in Tokyo
2011年10月31日 - アルジャジーラ(Suverndrini Kakuchi)
原文:http://english.aljazeera.net/indepth/features/2011/10/20111031105552755152.html


 アメリカにおいて継続中の「ウォール街を占拠せよ」デモに触発され、世界で三番目の経済大国で、増加する失業率や過酷な労働環境への不満を抱えた数千の若者たちや労働者たちが、安定した職や政府の改革を求めて通りへと繰り出した。二週間前の東京のデモは、近年最大の抗議運動として主催者が企図し、約五千人の参加者を集めた。

 日本中から集まってきた労働者たちと学生たちは、首都に結集し、ラップ・バンドがこの国の多くの人々がはまり込んでいる不安と希望のなさについての曲を演奏する中、拳を振り上げ、抗議のチャントを唱えた。

 政府発表による現在の全人口における失業率は5%だが、若年層の失業率は約9%にまで上っている。

 実に、15歳から24歳までの労働者の45%以上が非正規雇用に就いており、新卒大学生で働き口を見つけることができるのは56%だけであり、若者にとっては第二次世界大戦以来で最悪の状況であることを物語っている。


先の見えない未来

 デイケア・ワーカーのクマガイ・イチエさん(28歳)は、東京のデモで話しをするために、359キロメートル以上を旅して、日本で二番目に大きな都市である大阪からやって来た。「私は未来に対して怒っているし、フラストレーションを感じているし、心配なのです」と彼女は話した。

 「私のような若い人たちは、今日では希望のない状況に直面しています。なぜなら、政府も社会も私たちのことを気にかけていないからです」、憤りを抱えた群衆に対して、彼女はこう語りかけた。

 本年初期の数百万人のデイケア・ワーカーたちの熾烈なロビー活動は、なんとか最低賃金を一時間9ドルにまで上げることにこぎ着けた。2010年から50セントの値上げである。

 新しい法律を止めるための請願には、大阪府吹田市だけで三万人もの署名が集まった。その法律は担当する子どもの数をデイケア・ワーカー一人あたり30人にまで増やすことを許し、正規職を申し出る代わりにパートタイムで労働者を雇用することを可能にするものだった。

 クマガイさんは、仕事ではよりきつい労働を要求されるようになっている一方で、給料は六年間すえ置かれたままだと言う。

 彼女は、時間外労働に対して支払われることもなしに、毎週一日最低十二時間は働いている。不安定な未来に備えるため、倹約することが大切なことになって来たと彼女は言った。

 一方、二十年間の不景気がもたらした日本の莫大な財政赤字は、老齢人口の増加に伴い、公共福祉の費用を削減する先導役を務めている。

 「政府はそのような動きを公的資金の減少を理由に正当化しようとしています。私たちはそんな話には同意しません」と、クマガイさんは言う。


合衆国に触発されて

 日本の抗議運動の参加者たちは、銀行への救済措置や大企業に反対する合衆国のレトリックに触発されていると同様に、公共支出を大幅に削減し、広範で周期的な失業を生み出すことで、中産階級を縮小させると広く信じられている緊縮財政への反対にも触発されている。

 「私たちはアメリカの抗議運動に触発されたが、安定した未来を獲得するための自分たちなりの方法を模索していきたい」と、労働者の権利について主導的な役割を果たしている、首都圏青年ユニオンの書記長である河添誠さんは語った。

 実際に、東京での抗議運動は、反核活動家たち、クリーン・エナジーの青年ロビー団体から、国内での労働者の権利の闘争において最前線を務めてきた、全労連のようなベテランの労組まで広範囲を巻き込んで、11月に再開することが予定されている。

 河添さんによれば、日本の経済大国としての地位にとって、若者の雇用は決定的だという事実を受け止め、日本の社会は若者雇用の安定を生み出す責任を果たすべきだと言う。

 「人々は、職に就いていない若者を無責任で怠惰だと見なし、彼らに必要な援助を与えようとしないのです。こうした態度は変わらなければいけません」と、彼は付け加えた。


提案された議論

 雇用市場に入ろうとする若者にある程度の安定性を保証するために必要ないくつかの論点を、全労連はまとめ上げた。

 「政府は、技能訓練または研修中の若者に、彼らが職に就くまで財政的支援を与えること。大学三年生を当て込んだ就職活動制度は、彼らが学業を終えるまで止めること。企業が安定した雇用期間を保証する法案を制定すること」などである。

 こうした要求が広まる一方で、決してそれらが日本中で徹底されているわけではない。

 東京にある一橋大学の経済学部教授川口大司さんは、こうした若者の抗議運動には共感できる一方で、改革を求める声はまた、積極的解決策にも焦点を当てなければいけないと言う。

 「日本の雇用市場にとって緊急の問題は、いかにそれを国際的なものにするかということです。若者は拡大するグローバルな市場に対応するため、技術を身につけなければなりませんし、もっと多くの外国人労働者を受け入れるべきだという議論に関与しなければなりません」。

 「セーフティー・ネットの拡大に焦点を当てるだけでは、若者主導の運動は弱い」と、彼は付け加えた。

 エコノミストたちは、実業界で劇的な変化が進行しつつあると指摘する。日本の製造業が海外のより安価な拠点に移転する、グローバルな市場での韓国のようなアジアの虎たちとの熾烈な競争に対応するために、地方の会社が経費削減を採用するといったことだ。

 国民総幸福量(Gross National Happiness)の研究者であるフクナガ・マサオさんは、安定した未来を望む日本の若者たちの態度は、古い日本の記憶に基づくと語る。経済が拡大し続け、終身雇用制度が存在した時代の日本だ。

 「だが、そうした時代は終わった」とフクナガさんは言う。「未来は困難を抱えている。支援を求めて通りに繰り出した若者たちが、持ち上がりつつある新しい現実にも取り組むことを願っている」と、彼は言った。



訳者コメント:
 記事中では日付と場所は明示されていないが、10月15日に東京都内各所で催された「オキュパイ・トウキョウ」を取材した一週間前のアルジャジーラの記事。なので、ぜひ翻訳して紹介したかったのだが、いくつか翻訳上の困難を抱えた。

 まず、漢字のわからない方の氏名は、失礼ながらカタカナで表記するしかなかった。また、原文中にある「the National Federation of Labour Unions (NFLU)」が、どの団体を英語表記にしたものかわからなかった。結局全労連のことだと判断したが、違っていたら申し訳ない。

 いつもと同じく誤訳、誤字脱字の指摘を歓迎すると共に、そうした面からもご指摘があれば対応したい。

11/11の更新:
 再チェックして、それ以外は訳語の選択の問題だったのだが、一点だけミスが見つかった。「explained that while he is sympathetic ...」という部分を訳し忘れていたので、慌てて付け加えた。やはり再チェックは必要だ。

 今回のチェックでは、氏名団体名の問題は考慮しなかった。それは次回以降の課題としたい。
 


by BeneVerba | 2011-11-06 19:06 | 翻訳 | Trackback(1) | Comments(0)
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