お知らせ:『ウォール街を占拠せよ/はじまりの物語』明日9月28日発売
e0252050_14114414.jpg 明日九月二八日、私が初めて翻訳を担当した本『ウォール街を占拠せよ/はじまりの物語』(原題「Occupying Wall Street: The Inside Story of an Action that Changed America」)が大月書店から発売される。この運動の最初の二ヵ月間を中心に、数十名の運動の当事者たちがウォール街占拠について綴った本だ。ただし、一部の地域では、来月一日に配本されるそうだ。本来ならOWSの一周年記念に合わせて発売したかったのだが、出版のスケジュールに不慣れなせいもあり、ぎりぎりまで訳文を練っていたためにこの時期の発売となった。


 序文にも書かれているように、本書はまさしくドキュメントであり記録である。編集者氏と相談の上、原書にはない写真を大々的に使うことに決めたのもそのせいである。

 昨年九月一七日以前のブルームバーグヴィルというニューヨーク市長への抗議の占拠から、『アドバスターズ』からの呼びかけを受けて集まった人々が、準備期間を経てついに最初のジェネラル・アセンブリーを開く感動的な場面まで、あるいはメディアの注目も集まっていた一〇月から一一月までに起きたブルックリン橋での大量逮捕、「清掃」にかこつけた最初の排除の企て、そして、一一月一五日の強制排除まで迫真の記述が続いている。こうした部分は世界的な革命の年であった昨年二〇一一年の「インサイド・ストーリー」としての記録性を持つとともに、その高揚を伝えるものである。

 一方で、ジェネラル・アセンブリー、人民図書館、人民食堂、広報作業部会、法務作業部会、POC(有色人)作業部会など、運動内部の重要な活動についても具体的に書かれている。特にジェネラル・アセンブリーとPOC作業部会についての記述は、占拠運動に興味がある人にこそ読んでほしい章だ。前者からは水平的で合議的な、合意中心の意志決定がどのようなものであるのかが、後者からは「占拠」という行為の持つ皮肉な問題性とマイノリティの問題が対抗運動にとって重要な課題であることを知ることができるはずだ。

 原書を最初に読んだ時に感じたのは、この本からは複数の声が聞こえてくるということだった。本書を翻訳する作業は、そうした無数の声を聞きとりながら、それを損なわずに文体的な統一をはかるというなかなか困難なものだった。それがうまくいったかどうかは読者の判断に委ねたいと思う。

 実際この本は、当事者たちの筆に拠るものながら、客観的な記述を保っている。それにまた、ズコッティ公園(この本の中で運動内の呼び名である「リバティ広場」ではなく、この正式名称が用いられているのもそうした姿勢の表れではないだろうか)内部の東端と西端の対立に代表される、運動内部の緊張についても脚色なく記している。


 特に最初の章に書かれているように、またoccupywallst.orgも書いているように、昨年は地球規模の革命の年であった。「アラブの春」と呼ばれる中東での運動はむろんのこと、橋下市長が支配する大阪と比べられるようになったウィスコンシン州の抗議、もう一つの占拠運動であるスペインのM15運動など、世界中で反資本主義的な抗議の連鎖が続いた(ナオミ・クラインの表現を借りるなら「飛び跳ね」)。

 三・一一の原発震災を受けて、脱原発デモが起こり始めた日本もそうした文脈の中にあるのかもしれない。この本を翻訳する仕事の話を大月書店からもちかけられた時に頭の中にあったのは、単なる輪入ではない翻訳は可能か、なんとか占拠運動と脱原発デモを結びつけられないかということだった。だが、世界の運動にあって、今の脱原発運動に欠けているのは国家と資本の力に向かい合う視点である。

 この本の著者たちがおそらくは確信し、またこの運動の参加者でもある解説の高祖岩三郎氏と私が訳者あとがきで強調しているのは、OWSが現在も継続中であり、これからも何らかの形で続いていくだろうということだ。原発を止めても廃炉のプロセスがあり、放射能の影響も残り続ける日本でもまた運動は続いていくだろう。私が読者に知ってほしいのは上述のような視点である。

 とはいえ既にこの本は私の手を離れている。読者がどういう意味を読み込もうとそれは読者の自由であるし、その自由を確保することが訳者の仕事だと考えている。


 最後になったが、私がこの本の翻訳を担当することができたのも、このブログを読んで支持を与えてくれる読者のみなさんのおかげだと考えている。感謝したい。どうもありがとう。今後は、今回この本を訳した時に身に付けた技術や厳しさを反映して、引き続き情報や意見をオンライン上で発信していくつもりだ。

by BeneVerba | 2012-09-27 14:10 | 情報 | Trackback | Comments(0)
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