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ゼネスト
General Strike 2011年12月01日 - ガヤトリ・スピヴァク 原文: http://occupytheory.org/ http://occupiedmedia.us/2012/02/general-strike/ ある都市の全労働者がその道具を捨て置き、特定の諸要求が応じられるまで労働を拒否する時、それはゼネストと呼ばれる。この考えを最初に思いついたのは、労働者の一員ではなかったが、反国家主義の信念を持っていた人々である、一九世紀のアナーキストたちである。ドイツの反動的軍隊に殺戮されたポーランドの革命思想家、ローザ・ルクセンブルグ(一八七一~一九一九年)は、一八九六年に始まり一九〇五年のとてつもないゼネストに終わった、ロシア帝国での大規模なゼネストを目撃した後に、ゼネストの概念を書き換えて、これを労働者(プロレタリアート)のためのものにした。政治的な左翼から右翼に転向したフランスの思想家、ジョルジュ・ソレル(一八四七~一九二二年)もまた、労働者に力を注ぎ込むための方法として、ゼネストを思い描いていた。 アフリカ系アメリカ人の歴史家、社会学者であるW・E・B・デュボイス(一八六八~一九六三年)は、奴隷解放宣言直後の奴隷たちの大量脱走をゼネストとして記述した。なぜならば、奴隷制度が「黒人プロレタリアート」(綿産業ための農園労働者)に、通常の労働者として自らを形成することを許していなかったからだ。同じ時期に、インドの国民的解放運動家マハトマ・ガンジー(一八六九~一九四九年)が、再度ゼネストの定義を書き換えて、階級とは関係なしに、植民地支配を受けている民衆のためのものとし、そうして、ゼネストは労働者階級の運動から、市民的不服従とボイコットの政治の混成物へと転換された。彼は、それを「不服従」と呼んでいた。 今日では、グローバリゼーションが、労働とはほとんど関係のない金融システム――不均衡な通貨による取引――を通して機能するために、グローバルな労働者たちは深く分断されている。この分断こそが、もう一度ゼネストを呼び起こすための理由である。その利益が絶えず上方へと流れ込んでいる、体制によって権利を剥奪された人々によって、ゼネストは既に呼び起こされようとしている。それらは銀行を救済するために流れ込み、医療や教育から、そしてそれらをもっとも必要としている場所から遠ざけられている。今やこのゼネストの再定義において、権利を剥奪された市民たちの集団――すなわち、九九%――として、労働者が力を合わせる機会を得たのだ。 アントニオ・グラムシ(一八九一~一九三七年)は、国家による福祉制度から何の恩恵を受けていない人々や、国家において何の役割を果たしていない人々を、サバルタン――貧しい者たちの中でももっとも貧しい人々――として定義した。今日では、この話もまた書き換えられようとしている。我々が現在目撃しているのは、九九%のうち最大の部分である、中産階級のサバルタン化である。デュボイスとガンジーがかつて思い描いていたように、ゼネストは、古い時代のきっちりとした労働者/支配者の闘争を超える、強力な象徴となりつつある。まさにこの点において、心に留めおくべきゼネストのいくつかの特徴がある。
もしゼネストと法制度の間のつながりを認識するならば、それが法的な改革を目指すものではなく、社会的、経済的な正義を要求するものだと気付くだろう。銀行への救済措置を禁止すること、財政への法的監査を設けること、富裕層に課税すること、教育を脱民営化すること、化石燃料と農業への助成金に手を付けること、などなど。法的な変革への強烈な参与とその実践は、正義を実現するための努力なのだ。そして、覚えておくべきことは、政党とは異なり、ゼネストの参加者たちは、実際にものごとが変化するまで、妥協する必要がないということだ。既に圧力は功を奏している。一一月には、五%の手数料を徴収しようとした、デビットカードに対して勝利を見た。 ゼネストは常に、ある意味では「ウォール街」に対するものであり、より広い言い方では資本主義に対するものだった。しかし、革命もまた、個別の独裁者や王によって代表される、悪い体制に対抗するものであったために、「革命」という我々の概念も、武装闘争や暴力の行使、体制転覆と混同されている。ロシアではツァーだったし、中国では腐敗した封建制度とヨーロッパによる植民地支配だった。ラテンアメリカではラティフンディウム制だったし、フランスではブルボン家による君主制だった。アメリカではハノーヴァー家による君主制であり、後には奴隷所有制度だった。今日のアラブ世界では、チュニジアのベンアリであり、エジプトのムバラクである。 対照的にも、占拠運動においては、ゼネストの精神はその中へと入り込んでおり、アメリカの市民的不服従の伝統と協働している。つまり、市民たちは規制撤廃された資本主義国家に抗しているのであって、特定の個人または体制に抗しているのではない。それゆえ、短期的には我々は、民衆ではなく、ビジネスと銀行に対して国家に責任を持たせている、法律を変えなければならない。そして、長期的には、正義への意志を生かしてゆく教育を確立し、育まねばならない。 訳者コメント: 「ウォール街を占拠せよ(OWS)」運動においては、いくつかの自主的なメディアが現れたが、この「ゼネスト」というガヤトリ・スピヴァクの論考が掲載された雑誌『TIDAL』もその一つ(掲載されたのは二〇一一年一二月発行の第一号)で、同誌は「Occupy Theory, Occupy Strategy」をキャッチコピーにしている。 スピヴァクは、ゼネストという概念の変遷をたどりながら、その現在的な意義を考察している。ここでは、単に労働者のみがゼネストを担う存在ではなく、彼女がグラムシから取り入れた用語に従えば、「サバルタン」たちがゼネストを担うとされる。 OWSという特異な社会運動が発生した条件の一つとして、スピヴァクがここで述べているように、それまでマイノリティたちだけが経験していたような社会的な状態に、新自由主義の侵攻によって、中産階級に属する人々もまた置かれるようになったことがある。 当然ながら、「九九%」としてまとめられることには、差別と抑圧の問題を隠蔽しかねないという問題がある。この点については、前半のみながら既に訳出したアンジェラ・デイヴィスのスピーチや、『ウォール街を占拠せよ――はじまりの物語』の特に「ポキュパイ」の章を参照されたい。 なお、翻訳に当たっては、初出である『TIDAL』誌所載のものに基づいている(上記のリンクからPDFがダウンロードできる)が、同誌に掲載されたものは誤記が多いために、『The Occupied Wall Street Journal』のウェブサイトに掲載された同じ論考も適時参照した。
by BeneVerba
| 2013-03-18 08:23
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