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行進する学民思潮
Scholarism On The March 2015年03月 - 黄之鋒 原文:http://newleftreview.org/II/92/joshua-wong-scholarism-on-the-march ――そうした出来事において、大学生が顕著な役割を果たしていましたね。その中でも香港専上学生連合が、主導的な役割を果たしていました。この組織をどのように思いますか。 学生連合は、民主派を長年に渡って支持してきました。一九八〇年代には、中国での一九八九年の学生蜂起に、連帯を表明していました。事務局長の陶君行が北京に行き、警察による鎮圧があった夜に、最後まで天安門広場にいた一人となりました。 ですが、学生連合は、議長と書記長が毎年代わるために、行動において連続性があるとは言えません。今日では、八つある大学のうち三大学のみ、七〇〇万人の人口のうちの八万人以下のみが、本当に政治的な学生だと見なされています。植民地時代からの香港大学、一九六三年に設立された沙田区の香港中文大学、一九九九年に教養学部が創設された嶺南大学です。これらはそれぞれ違った特徴を持っています。香港大学の学生新聞は、以前から香港の独立を呼びかけています。これは右派のアイディアです。香港中文大学は左派で、そのキャンパス文化はバークレーのような感じです。嶺南大学は、カルチャラル・スタディーズの牙城で、そこではほとんどの教授が進歩派なのです。三つの中で、もっともラディカルな大学です。その他の大学は政治的に無関心です。 雨傘革命の間には、おおよそ五〇〇から六〇〇名の教員が、学生たちの闘争を支持する署名を行いました。しかし、概して公衆の問題に興味を持っているのは、政治学もしくは、社会科学の教員たちのみです。教員たちのほとんどは、全くもって進歩的ではありません。彼らは、単に研究を書き上げて、アカデミックなキャリアを追及したいだけなのです。これは、社会的により意識的な台湾と比べて、大きな対照をなしています。 ――雨傘革命には、穏健派からラディカル派まで、民主派のようなもっとも穏健な勢力から、オキュパイ・セントラルのようなそうでもない勢力まで、香港専上学生連合のようなよりラディカルな勢力や、学民思潮のようなもっとも闘争的で非妥協的な勢力まで、様々な組織が参加していたと言うことは正確でしょうか?片方に熱血公民のような組織があり、もう一方には社会民主連線のような組織があったと言うことは、そのような分類に叶ったことでしょうか? 私が思うに、民主派とオキュパイ・セントラルの指導力は、理想と行動において、等しく節度を守ったものでした。同様に、学民思潮と学生連合もまた、ラディカルな行動と理想において、似通ったものでした。私が述べたい違いとは、それぞれの状況分析の中にあります。 学民思潮が提案して、学生連合に圓方の掌握を確信させることができたのです。さもなければ、彼らは次の行動に移ることはできなかったでしょう。北京行きは彼らのアイディアで、その線での行動には、学民思潮の半分のメンバーしか賛同しませんでした。さらに、学民思潮の中核となるリーダーたちは、学生連合のラディカルな部分よりも、ラディカルな行動を受け入れつつ予期して、警察に立ち向かって、前線に立つことを好みました。社会民主連線は、理想と行動において、いつでもこの二つの学生組織を支持してきました。 熱血公民は、香港特別行政区基本法の書き換えのようなラディカルな行動について語りますが、それは実際的ではありません。彼らは、どのようにして成し遂げるかも言わずに、香港の独立について要求するだけなのです。彼らのスローガンも一貫したものではありません。警察の暴力に対して反撃することを支持しながら、負傷者、逮捕者なしを行動のゴールに据えるといった具合です。ですので、熱血公民を政治的にどこに分類すれば良いのか、私には本当にわかりません。 ――香港独立を支持する感情は、現在どれほどの強さを持っているのですか? そうした意見は増加しています。ですが、真剣な見込みにおいてではありません。それに対する国際的な支持もありません。とてもラディカルなふりをした要求ですが、表面的で、そのうち消え去るでしょう。 ――香港の運動は、労働組合からどのような支持を受けましたか? ごくわずかなものでした。脱工業化が、労働組合を非常に弱くしたのです。「ロングヘア」として知られている梁國雄が、運動に連帯の意思を表明するために、やって来ることを呼びかけたのですが、ただフリーユニオンが積極的な反応を示しただけでした! ――雨傘革命に対して賃借対照表を作成するのなら、どのようなものを作りますか? それは、より多くの人々が参加するにつれて、香港社会の政治的覚醒を高めるものとなりました。市はこれ以前に、大規模な市民的不服従を経験したことがありませんでした。二〇一二年の反国民教育キャンペーン――それには私も反対していたのですが――の時には、市民的不服従の要素はありませんでした。雨傘革命は、変革のための道具として、より幅広く受け入れられるものとなりました。 私の意見では、二〇年間もの徒労に終わった決まり切ったアジテーションの後で、政治体制を変えることのできる唯一の道として受け入れられたのです。もちろん、政治的な改革としては、私たちは何かを得たわけではありません。政府は譲歩することを拒み、運動は結果として、何も目的を達成することなくして、終わりを迎えました。ですが、私たちは闘いに負けたわけではありません。なぜなら、私たちは、これよりもさらに力強い次のラウンドを始めることができるからです。 ――ですが、昨年と同じ要求を再び繰り返すだけなのですか?それでは行き詰まるだけではないでしょうか?人々は、にべもなく断られた要求を繰り返すことの意味は何だ、と言うではないでしょうか?人々を幻滅させる危険を冒しているのではありませんか? 前回のストライキでは、一万人の学生が参加しました。もし、私たちが、政治的な変革を求めて圧力をかけ続けるなら、次は五万人が参加することでしょう。直接選挙を求める闘いは、香港ではもう一〇年間続いており、それへの支持が衰える気配はありません。それは民衆の要求であり、香港の人々は粘り強いのです。この六月か七月には、非公式の住民投票を呼びかけるつもりです。普通選挙を呼びかけた二〇一四年のオキュパイ・セントラルには、八〇万人の市民が参加しましたが、それよりもさらに巨大かつ戦闘的になることでしょう。 ――現在の学民思潮の強みは何ですか? 私たちには、三〇〇人のメンバーがいます。その三〇%が大学に、七〇%が高校にいます。ジェンダー的なバランスは、六〇%が男性で、四〇%が女性です。やや少なく感じるかもしれませんが、全ての民主派を集めても七〇〇名ほどで、活動的なのはそのうちのわずかです。私たちの仕事は、自分たちの組織的な強さを高めることです。抵抗の構造を拡張し、その周りにネットワークを張り巡らせることです。ちょうど中国共産党がやっているようにね。 私たちにとって、主なターゲットは市の高等学校であり続けています。それこそ、私たちが努力を注ぎ込んでいるところです。なぜなら、若者を味方に付けることができれば、未来において勝利することができるからです。この仕事は全くのところ簡単ではありません。なぜなら香港は試験中心社会であり、高等教育への道が限られているために、学生には集中的な圧力がかかっているからです。わずか二〇%以下の高校生のみが、大学に入学することができます。成功するには、長時間にわたる勉強が必要であり、他のことをする時間もエネルギーもごくわずかしか残されていません。だからこそ、政治的な抑圧が存在するのです。 私たちが活動を始めた頃、学業による控除を除けば、市民運動に支払われるお金などありませんでした。しかし、雨傘革命以来、活動家には逮捕もありうることは知られているし、明らかに両親たちは、そのような危険を冒さないように圧力をかけているのです。高等学校の学生たちの中に、私たちの後継者を探し出すことは深刻な問題です。ですが、簡単に見つけることができるというわけではありません。おそらくは、時が味方になってくれるでしょう。 ――ところで、ご自身の学業はどうですか? 明らかに窮乏していますね。私は数学が大嫌いなので。ですが、二つの大規模な結集の間、ほとんど寝る暇もなく、運動のために働いていたのです。朝の九時から真夜中まで勉学に勤しむ時間なんてなかった。台湾でひまわり学生運動が勃発して、国会を占拠して中国との取引を見直すように迫った時に、私はちょうど試験にとっ捕まっていました。とてもイライラしましたよ。だから、私の成績は貧弱なものです。香港大学にも香港中文大学にも、入学することはできませんでした。だが、香港公開大学には受かりました。八つの大学のうちで、一番下ですね。あそこでは、授業のほとんどを貧弱なパワーポイントでやるのです。 ――あなたが政治的な最前線から退いて以来、社会的な最前線において要求が増加していませんか?香港の途方もなく不平等な社会において、貧しく弱いものが悲惨な生活条件で生きなければならない一方で、億万長者たちはこれ見よがしに巨万の富を見せつけているのでは?政府は、労働時間、住宅問題、年金といった問題と同様に、譲歩しようとしないのではないですか? 香港社会は根深いところで保守的です。下層階級の態度でさえ右派のそれなのです。年金について貧困層からの支持はありません。何であるにせよ「左」は、中国共産党に結びつけて考えられている。特に「左派」的であるとは言えないような、一日八時間の労働といった初歩的な要求でさえも、そうなのです。大衆の抱く信念はこうです。とにかく勤勉に働きさえすれば、成功できるし、金持ちにも成れる。もし、金持ちでないのなら、学校か職場で、良い結果を残せなかったということ。貧困がまるで、構造的な問題ではなく、個人の過ちであるかのように取り扱われているのです。 特に高校生たちは、社会的な問題に関心を寄せていません。彼らは、単にもっと民主主義が欲しいだけなのです。彼らの思考様式はこうです。社会はもっとリベラルになるべきだ。より平等になるのではなくて。概して、もっとも人気のある科目は経済学ですが、そこでは自由市場が常にベストであり、変革は需要曲線のシフト以上のものではないと唱えられているのです。これは別の種類の洗脳だと言えるでしょう。中国共産党のものほど目立たなければ、洗脳だと感知されることもない、そういう種類の洗脳です。学民思潮を建設する唯一の方法は、政治的な要求に集中することです。 ――もし、香港社会がそんなに保守的であるならば、控えめな社会的要求さえも、大衆的な支持を集めることは困難に思えます。それは学民思潮自身のダイナミックさにとって、矛盾と言えるのではないでしょうか?そこでいくつかの質問です。もし達成できたとして、香港特別行政区立法会と香港特別行政区行政長官の民主的な選挙は、いったいどのような違いをもたらすのでしょうか?結局のところ、香港は既に表現の自由や結社の自由、人身保護令状や独立した司法制度など、法の支配の意味するものを、謳歌しているのではありませんか?政治的な民主主義は、疑いもなくそれらのものが腐敗するのを防ぐでしょう。しかし、そうした消極的な効果を除いては、いったいどのような積極的な利益が望めるのでしょうか?もし、民衆が社会的経済的な現状に、完全に満足しているのならば? 香港の社会的な雰囲気は保守的なものです。社会=経済的な問題についていえば、両親たちの関心は、彼らの子どもたちの教育と私有財産に向かっています。しかし、香港は短期間に変わるし、人々も短期間に新しいやり方に順応するのです。この保守的な雰囲気も、もし私たちが学生たちに良い影響を及ぼし、進歩的な政治家が立法会で議席を取るのを助ければ、変わることでしょう。 もし、進歩派がより多くの議席を獲得し、より多くの資源にアクセスできるようになれば(一議席当たり、一〇万香港ドル)、少なくとも彼らは、標準労働時間や国際的な年金基準、最低賃金といった問題を擁護することができるようになるでしょう。現在の制度において、進歩派はほぼ永続的な少数派であり、人々は政治について議論することを諦めています。なぜなら、そのような議論は無益で、立法会の構造的な枠組みに沿ったものだからです。もし、民主派がポリシーの変更を支持すれば、少なくとも段階的に社会の雰囲気も変わっていくことでしょう。私たちの目標は、社会をよりリベラルなものにしたその後で、社会をより平等なものにすることです。 訳者コメント: 「New Left Review」誌最新号に掲載された、黄之鋒のインタビュー記事(NLR誌了承済み)。黄之鋒は、昨年二〇一四年のいわゆる「雨傘革命」の中心人物の一人と見なされている。文字数制限のため二分割して掲載する。前編はこちら。誤訳その他の指摘歓迎。
by BeneVerba
| 2015-05-05 23:35
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