2011年 10月 09日 ( 2 )

ウォール街を占拠せよ:今世界で最も重要なこと
Occupy Wall Street: The Most Important Thing in the World Now
2011年10月6日 - ナオミ・クライン
原文:http://www.naomiklein.org/articles/2011/10/occupy-wall-street-most-important-thing-world-now


 私は、木曜日の夜に「ウォール街を占拠せよ」で話すように招かれるという、栄誉を授かった。アンプが(恥ずべきことに)禁止されていたので、私が言ったことは全て、他の人々にも聞こえるよう、何百もの人々によって繰り返されなければならなかった(別名「人間マイクロフォン」)[1]。そのため、私が実際にリバティ広場(Liberty Plaza)で言ったことは、非常に短いものでなければならなかった。そのことを念頭に置いてほしい。これはより長い、ノーカット版のスピーチである。


 あなたたちを愛してます(I love you)。

 私は今、数百人のあなたたちに、「あなたを愛してます(I love you)」と大声で返してくるように、とは言いませんでしたね。これは明らかに人間マイクロフォンのボーナス機能です。他の人たちからあなたへと言われたことを、あなたから他の人たちへと言ってください、もっと大きな声で。

 昨日、労働者のデモで講演者の一人がこう言いました。「我々はお互いを見つけたのだ」と。この感想は、今まさにここで形成されているものの美しさを捉えています。より良い世界を望むすべての人々が、お互いを見つけるために、大きく開かれた空間を。同様に、どの空間も収容することができないほど、大きなアイディアを。私たちは大きな嬉しさに包まれています。

 私が知っていることが一つあるとすれば、1%の富裕層[2]は、危機を愛しているということです。人々がパニックに陥り、絶望し、何をすればいいのか誰も見当もつかない、その時こそ、彼らが企業優先政策のほしい物リスト(wish list)を押し通す、理想的な時なのです。教育と社会保障を民営化する、公共サービスを大幅に削減する、企業の力への最後の制約を取り除く。この経済危機の最中、これが世界中で起こっていることなのです。

 そして、この戦略を防ぐたった一つのものがあります、幸いにもそれはとても大きなものです。それは99%です。残りの99%がマディソンからマドリッドまで通りに繰り出し、「ノー、私たちはお前たちの危機に金を払うつもりはない」と言うことです。

 そのスローガンは、2008年にイタリアで始まりました。それはギリシャとフランス、アイルランドへと飛び火していき、遂に危機が始まった場所へとたどり着きました。

 「彼らはなぜ抗議しているんだ?」。テレビでは当惑した識者たちが訊ねています。 その一方で世界の残りはこう訊ねているのです。「なんでそんなに時間がかかったんだ?」。「いつになったら現れるのかと思っていたよ」。そして何よりこう言っているのです。「ようこそ」と。

 多くの人が「ウォール街を占拠せよ」と、1999年にシアトルで世界の注目を集めた、いわゆる反グローバリゼーション抗議運動との類似点を比較しています。あれはグローバルで、若者主導で、分散型の運動が、企業の力に対して直接的に狙いを定めた最後の時でした。そして私は、私たちが呼ぶところの「運動の運動(the movement of movements)」の一部だったことを、誇りに思っています。

 しかし、重要な違いもまたあるのです。例えば我々は目標として、世界貿易機関(WTO)、国際通貨基金(IMF)、G8といった、サミットを選びました。サミットはその性質上一時的なもので、一週間続くだけです。それはつまり、私たちもまた一時的なものであったということです。私たちは現れ、世界中のメディアの見出しを飾り、そして消えました。それから、9.11の攻撃に続く苛烈な愛国心と軍国主義の狂乱の中で、私たちを完全に一掃するのは容易なことでした。少なくとも北アメリカではそうだったのです。

 一方「ウォール街を占拠せよ」は、固定された標的を選びました。あなたたちは、ここでの自分たちの存在に、終了期日を設けていません。これは賢明なことです。あなたたちが居続けるその間だけ、あなたたちは根をのばすことができるのです。これは決定的なことです。あまりにも多くの運動が美しい花々のように咲き、すぐに死に絶えていくのが情報化時代の現実です。なぜなら、それらは土地に根をはっていないからです。そして、それらはどうやって自分たち自身を維持し続けるかについて、長期的な計画を持っていないからです。だから嵐が来た時、それらは洗い流される。

 水平的かつ深く民主的であることは、素晴らしいことです。しかしこうした原則は、これからやってくる嵐を乗り切るのに充分なほど頑丈な、建造物や団体(structures and institutions)を築き上げる重労働と、互換性があるのです。私は、それがやがて起こるのだと確信しています。

 他にもこの運動は正しいことをしています。あなたたちは、非暴力であろうと決心しています。あなたたちは、メディアが切望している壊れた窓や、通りでの乱闘のイメージを与えることを、拒否しています。そしてその驚くべき規律は、いくどとなく、警察の恥ずべき不当な暴力[3]に話が及ぶ結果を引き起こしています。それこそまさに、私たちが昨晩に多く目撃したものですね。一方で、この運動への支持は拡大し続けています。より多くの知恵とともに。

 しかし、十年という時がもたらした最大の違いは、1999年には私たちは熱狂的な好景気の絶頂時に、資本主義と対決していたということです。失業率は低く、株式のポートフォリオは急騰していました。メディアは金融緩和政策に酔っていた。当時それは操業停止(shut downs)ではなく、新設企業(start-ups)に関するものばかりでした。

 私たちは、熱狂の背後にある規制撤廃が相当の犠牲を払うものであることを、指摘しました。それは労働基準に損害を与えていました。それは環境基準にも損害を与えていました。企業は政府よりも強力になろうとしており、民主主義に損害を与えていました。しかし、あなたたちに正直に言うなら、良い時代が過ぎる中で、貪欲に基づく経済システムに挑むことは、困難な説得でした。少なくとも豊かな国々ではそうでした。

 十年後の今、もはや豊かな国などないかのようです。ただ、たくさんの豊かな人たちがいるだけです。公共の富を略奪し、世界中の天然資源を使い尽くしながら、豊かになった人たちです。

 論点は、今日では誰もが見て取れるように、このシステムがとてつもなく不公正で、制御不能なまま疾走していることにあります。足かせをはずされた貪欲は、世界経済を破壊しました。そしてそれは同じく、自然界を破壊しているのです。私たちは海を乱獲し、水圧破砕(fracking)と深海掘削で水を汚染し、アルバータ州のタール・サンドのように、地球上で最も汚いエネルギーの形態へと向かっています。そして、私たちが排出する炭酸ガスの総量を吸収しきれない大気は、危険な温暖化を引き起こしています。連続的な災害が、新たな常態となりました。経済的であり生態的である災害です。

 これらが地上の事実(the facts on the ground)です。1999年に比べて、これらがあまりにも露骨で、あまりにも明白なため、公衆が理解するのも、運動を構築するのもはるかに容易なのです。

 私たちがみな知っているように、あるいは少なくとも感じているように、この世界は逆さまなのです。私たちは、実際には有限であるものに対して、まるで尽きることがないかのように振る舞っています――化石燃料とその排出物を吸収する大気中の余地のことです。そして私たちは、実際には豊富であるものに対して、まるで厳格で不動の限界があるかのように振る舞っています――私たちが必要とする種類の社会を構築するための財源のことです。

 私たちの時代の課題は、これをひっくり返すことです。この偽の希少性に挑戦することです。私たちには、まともで包摂的な社会(decent, inclusive society)を構築するだけの余裕があるのだ、と主張し続けることです――その一方で同時に、地球が引き受けることができる本当の限界に注意を払うことです。

 気候変動が意味しているのは、私たちはこれを、締め切りまでに成し遂げなければならない、ということです。今度は私たちの運動は、出来事によって気を逸らされても、分断されても、燃え尽きても、一掃されてもなりません。今度こそ、私たちは成功しなければなりません。私が言っているのは、銀行を規制し、金持ちに増税することではありません。それらも重要なことではあるとはいえ。

 私が言っているのは、私たちの社会を統治している根本的な価値観を変える、ということです。それは、メディア好みの一つの要求事項(a single media-friendly demand)にぴったり収めるのは難しいし、どういう風に成し遂げればいいのか把握するのも難しいことです。しかし、難しくてもなお緊急を要することなのです。

 私はそれを、この広場で起こっていることに見ているのです。互いに食べ物を与えあい、互いに暖めあい、自由に情報を共有し、無料の医療や「瞑想のクラス」と呼ばれているものを提供し、エンパワーメントの訓練を施すというやり方の中に。私がここで気に入ったサインは、「私はあなたを気にかけている(I care about you)」と言っています。お互いの視線を避けるように人々を訓練する文化――言うなれば「奴らには死なせておけ」の文化――において、これは深遠でラディカルな声明です。

 最後にいくつかの考えを。この偉大な闘争の中で、重要ではないいくつかのことがあります。

  • 私たちが何を着ているのか。

  • 私たちは拳を振り回すのか、それともピース・サインを作るのか。

  • 私たちのより良い世界への理想を、メディアのサウンドバイト[4]に適合させることが可能かどうか。

 そしてここに、重要ないくつかのことがあります。

  • 私たちの勇気。

  • 私たちの倫理的な基準(moral compass)。

  • 私たちがお互いをどのようにとり扱うのか。

 私たちは、経済的にも政治的にも地球上で最も強力な勢力に、喧嘩をふっかけました。それは恐ろしいことです。そしてこの運動が、ますます強力に成長するにつれ、もっと恐ろしいことになるでしょう。そこには小さな目標へと移行する誘惑があることに、常に警戒しておいてください。例えば、この集会であなたの隣に座っている人に対して、のようにです。結局のところ、それは勝つのが容易な闘いなのです。

 そうした誘惑に屈してはなりません。私はくだらないことで言い争うな、とは言いません。しかし今度こそは、これからの長い長い年月のために、私たちが協力して働こうと計画したかのように、お互いをとり扱いましょう。なぜなら待ち受けている課題が、まさにそれを要求するからです。

 この素晴らしい運動を、それが世界で最も重要なことであるかのように取り扱いましょう。なぜなら、実際にそうだからです。本当にそうなのですから。



1. 人間マイクロフォン:人間マイクロフォン(the human microphone)がどういうものかは、10.5のマイケル・ムーアのスピーチを視るとよくわかる。

2. 1%の富裕層:アメリカの1%の富裕層が、どれほど富を独占しているかは、ThinkProgressのこの記事がわかりやすい。

3. 警察の恥ずべき不当な暴力:10.5の「ウォール街を占拠せよ」抗議行動では、警察が催涙ガスや警棒などの直接的な暴力をふるった。RTのこの動画この動画、アルジャジーラ英語版のこの記事などを参照。

4. サウンドバイト:ニュース番組で流される、スピーチやインタビューなどからのごく短い抜粋のこと。



訳者コメント:
 拙い部分が多々あると思われるが、とりあえず投稿。誤訳や誤字脱字などの指摘はこのエントリのコメント欄にてどうぞ。労力と能力の能う限り更新する予定(あくまで予定)。

 一つだけ感想を言えば、「今世界で最も重要なこと」とは、「ウォール街を占拠せよ」運動であるとともに、「私たちの社会を統治している根本的な価値観を変える」こと、逆さまの世界をひっくり返すことだと思われる。

10/10の更新:
 細々とした修正をたくさんと、訂正をいくつか。ちょっとした脚注を追加。小さな修正を行う場合は、更新を記載しない方針。

10/11の更新:
 YouTubeで視聴できたスピーチの動画を踏まえた上で、いくつかの修正と訂正。安定版。

10/13の更新:
 前回参考にしたスピーチの動画より明瞭な新しい動画を参考にしつつ、あらためて訳を見直した。なるべく小さな変更にとどめたかったが、以前に読み切れていなかったところもあり、予想以上の数の手直しになった。とはいえ、前回の更新で定まった形は引き継いでいる。さしあたっての「完成版」。

 明らかなミスなどが見つかった場合などを別として、今後私からは本文には手を加えないつもりでいる。誤訳や誤字脱字などの指摘は引き続き歓迎。後は脚注をもう少し充実させ、参考リンクなどを付け加えたいが、それがいつになるかは保証できない。


訳者謝辞:
 二つの点で、この訳はKatsuaki Sakai(@beyondaki)さんがいなければ、成立していなかった。一つは、私に翻訳をしようと思い立たせてくれたこと、もう一つは、ナオミ・クラインのスピーチの動画を教えてくれたこと。時には誰かのつぶやきが、誰かの行動に結びつくこともある。これからも善き相互作用が起きることを願いつつ、厚くお礼申し上げる。

2012/10/28の追記:
 新しいプロジェクトの一環として方針を変更し、本稿を訳し直した。「ナオミ・クライン - ウォール街を占拠せよ:今世界でもっとも重要なこと [新訳]」という別エントリを参照してほしい。




by BeneVerba | 2011-10-09 17:48 | 翻訳 | Trackback(2) | Comments(8)
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by BeneVerba | 2011-10-09 15:18 | このブログ | Trackback | Comments(0)