一%の最富裕層アメリカ人について知っておくべき五つの事実
How Unequal We Are: The Top 5 Facts You Should Know About The Wealthiest One Percent Of Americans
2011年10月03日 - シンクプログレス
原文:http://thinkprogress.org/economy/2011/10/03/334156/top-five-wealthiest-one-percent/


 数百人の抗議者たちによる目下継続中のウォール街占拠は三週目――そして、抗議活動はボストンやロサンジェルスといった他の都市に拡大中だ――を迎え、デモ参加者は新しいスローガンを掲げた:「我々は九九%だ(We are the 99 percent)」。このスローガンは、九九%のアメリカ人と最も豊かな一%のアメリカ人と間の経済的な闘いについて触れたものだ。最も豊かな一%のアメリカ人は、中産階級の富をすり減らして、ますます国富において大きなシェアを占めるようになっている。

 一%の最富裕層アメリカ人が正確にはどれほどお金持ちであるかを知って、あなたは衝撃を受けるかもしれない。シンクプログレスは、アメリカのこの超富裕階級に関する五つの事実をまとめた。


1. 一%の最富裕層アメリカ人が、アメリカの富の四〇%を所有している:

 ノーベル賞受賞者のジョセフ・スティグリッツが指摘したように、最富裕層の一%のアメリカ人は今や国家の富の四〇%を所有している。社会学者のウィリアム・ドムホフ(William Domhoff)は、二〇〇七年の統計を用いて、一%の最富裕層アメリカ人が四二%の金融資産を所有しているという、この富の不均衡を図示している(自己資本合計は個人の住宅の価格を引いたもの)。最下部の八〇%はどれほどの富を所有しているのだろうか?たったの七%である:

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 スティグリッツが指摘したように、この不均衡は過去のそれよりもひどくなっている。二五年前には1%の最富裕層は、三三%の国家の富を所有していた。


2. 一%の最富裕層のアメリカ人は、国民所得の二四%を得ている:

 今日では、一%の最富裕層アメリカ人がほぼ四分の一の国民所得を得ているが、一九七六年にはたった九%を得ているだけだった――つまり、彼らの国民所得におけるシェアは、およそ三〇年で三倍になった。


3. 一%の最富裕層アメリカ人は、アメリカの株式、債券、投資信託の半分を所有している:

 政策研究所(The Institute for Policy Studies)は、金融投資の所有における非常に大きな不均衡を図示している。五〇%の最下層のアメリカ人は、これらの投資のたった〇.五%を所有するだけであり、無に等しい:

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4. 一%の最富裕層のアメリカ人は、わずか五%の個人的負債を抱えるだけである:

 二〇〇七年の統計を用いて、社会学者のウィリアム・ドムホフは、一%の最富裕層が五%の個人的負債を抱えているのと対照的に、九〇%の最下層が七三%の個人的負債を抱えていると指摘している

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5. 一%の最富裕層のアメリカ人は、一九二〇年代以来最も多くの国民所得を得ている:

 予算政策優先度センター(Center for Budget and Policy Priorities)が、二〇〇七年のデータを用いたこのチャートで図示するように、一%の最富裕層アメリカ人は、国民所得における非常に大きな割合を占めるにとどまらず、彼らの国民所得におけるシェアは大恐慌の時代よりも大きくなっている:

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 エリザベス・ウォーレン教授が解説したように、「この国には、独力で豊かになった人など誰もいない。誰もだ。隠された社会契約の一部は、あなたが何かを得るためには、次にやってくる子どものために先に支払う、ということだ」。さらに頻繁にこの現象は起こり続け、デモ参加者たちに、通りへと繰り出す理由を与え続けている。



訳者コメント:
 アメリカの不平等をわかりやすくまとめた簡潔な記事。原文にあるリンクはThinkProgress内の記事へのリンクを除いて全てそのまま。ただし、訳者はそれらの全てを消化しきれなかった。

 「total net worth minus the value of one’s home」というのをどう訳するか、最後のエリザベス・ウォーレン教授の言葉をどう訳するか、考えあぐねた。どなたかご教示を。


2012/6/3:
 若干の語句の修正と表記の統一。わからなかった部分を「自己資本合計は個人の住宅の価格を引いたもの」と訳してみた。題名を「一%の最富裕層アメリカ人について知っておくべき五つの事実」に変更。

# by BeneVerba | 2011-10-19 20:22 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
民主主義と資本主義の結婚は終わった
The Marriage Between Democracy and Capitalism is Over
2011年10月09日 - スラヴォイ・ジジェク
原文:
http://occupywallst.org/article/today-liberty-plaza-had-visit-slavoj-zizek/
http://www.imposemagazine.com/bytes/slavoj-zizek-at-occupy-wall-street-transcript
http://beneverba.exblog.jp/16220243/

 私たちは負け犬と呼ばれています。しかし、真の負け犬たちはあそこウォール街にいます。彼らは、数十億もの私たちのお金で、救済措置を受けたのです。私たちは社会主義者と呼ばれています。しかし、ここには既に富裕層のための社会主義が存在しています。彼らは、私たちが私有財産を尊重していないと言います。しかし、二〇〇八年の金融崩壊においては、ここにいる私たちの全員が、昼夜の境なく数週間の破壊活動に及ぶよりも多く、苦労の末に手に入れた私有財産が破壊されたのです。

 彼らは、私たちは夢を見ているのだと言います。真に夢を見ている人というのは、ものごとが永遠にそのままの状態であり続けることが可能だと考えている人たちのことです。私たちは夢を見ているのではありません。私たちは、悪夢へと変わろうとしている夢から、覚めつつあるのです。私たちは何一つ破壊していません。私たちはただ、どのように体制が自壊するのかを目撃しているのです。

 私たちがみな知っているカートゥーンの古典的な場面があります。断崖へと到達した猫が、下には何もないという事実を無視して、そのまま歩き続けるのです。下を見てそのことに気づいた時に、ようやく落下します。それが私たちがここでやっていることです。私たちは、ウォール街の面々にこう言っているのです。「おい、下を見ろ!」と。

 二〇一一年の四月中旬、中国政府は、別の現実やタイム・トラベルを含む内容のTV、映画、小説を、全て禁止しました。これは中国にとって良い兆候です。つまり、人々が未だオルタナティブを夢見ていることを意味しているからです。そのため、そうした夢を禁止しなければならなかったのです。ここでは、そのような禁止は必要ありません。なぜなら、支配体制が私たちの夢見る能力を抑圧すらしないからです。私たちが普段観ている映画を思い浮かべてください。世界の終わりを想像することは容易です。小惑星が地球に激突して、全ての生命体が絶滅するとか、そういったたぐいのものです。しかし、資本主義の終焉を想像することはできません。

 それでは一体、私たちはここで何をしているのでしょうか?ここで一つ共産主義時代の、素晴らしく、古いジョークをお話しさせてください。一人の男が、東ドイツからシベリアへと、働くために送られました。彼は、自分の手紙が検閲官によって読まれるであろうことを知っていました。そこで自分の友達にこう言いました。「暗号を決めておこう。もし、私から受け取った手紙が青いインクで書かれていたら、私の言っていることは真実だ。もし赤いインクで書かれていたら、嘘だ」。

 一ヵ月後、彼の友達は最初の手紙を受け取りました。全てが青いインクで書かれていました。その手紙にはこう書かれてました。「ここは全く素晴らしいところだ。商店はおいしい食べ物で一杯だ。映画館では西側の面白い映画をやっている。アパートメントは広々として豪華だ。ここで買えないものと言ったら、赤いインクだけだ」。

 私たちは、このようなあり方で生きているのです。私たちには、私たちが望むあらゆる自由があります。私たちには、ただ赤いインクがないだけなのです。私たちの不自由を明確に表すための言語が。私たちがそういう風に話すようにと教えられた自由についての話法――「テロとの戦い」とかそういったことです――が、自由を偽ってしまうのです。そして、それがあなたたちがここでしていることなのです。あなたたちは、私たちみなに赤いインクを授けているのです。


 そこには危険もあります。自分自身と恋に落ちないようにしてください。私たちはここで楽しい時を過ごしています。だが、覚えておいてください。カーニバルは安上がりなのです。重要なのはその翌日、私たちが日常の生活に戻らねばならなくなった時です。そこに何らかの変化はあるのでしょうか?私はあなたたちに、これらの日々を「ああ、私たちは若く、全ては素晴らしかった」とか、そういった想い出にしてほしくありません。

 覚えておいてください。私たちの基本的なメッセージは、「私たちはオルタナティブについて考えることを許されているのだ」ということです。タブーは破られました。私たちは最善の可能世界に住んでいるわけではないのです。しかし、この先に長い道のりがあります。そこには真に困難な問いが、立ちはだかっています。私たちは、私たちが何を望んでいないかを知っています。ですが、私たちは一体何を望んでいるのでしょう?どのような社会組織が資本主義の代わりとなることができるのでしょう?私たちはどのようなタイプの新しいリーダーを望んでいるのでしょう?

 覚えておいてください。問題は腐敗でも貪欲でもありません。腐敗へと駆り立てる体制が問題なのです。敵だけに注意するのでなく、既にこの抗議運動を薄めようと画策している偽の友にも注意してください。あなたが、カフェイン抜きのコーヒーを、アルコール抜きのビールを、脂肪抜きのアイスクリームを渡されるのと同様なやり口で、彼らはこれを無害で道徳的な抗議運動に変えようとするでしょう。カフェイン抜きの抗議(A decaffienated protest)です。


 私たちがここにいる理由は、私たちがこの世界にうんざりしているからなのです。数ドルをチャリティに寄付することで、コーラの缶をリサイクルすることで、もしくは、スターバックスのカプチーノを買うと、その一%が飢えに苦しむ第三世界の子どもたちのところに行くことで、私たちをいい気分にして、それで良しとしているこの世界に。労働と拷問を外部に委託したその後で、結婚仲介業者が今や私たちの性生活ですら外部に委託しているその後で、私たちの政治的参加もまた長い間委託されるに任せていたことを、私たちは今や理解しています。私たちはそれを取り戻したいのです。

 もし、共産主義が一九九〇年に崩壊した体制を意味するのならば、私たちは共産主義者ではありません。今日では、それらの共産主義者たちがもっとも能率的で冷酷な資本主義者であることを、思い起こしてください。今日の中国には、アメリカの資本主義以上にダイナミックな資本主義が存在しますが、それは民主主義を意味しません。それが意味することは、あなたが資本主義を批判しようとする際に、まるであなたが民主主義に反対しているかのように、脅されるような真似を許してはならないということです。民主主義と資本主義の結婚は終わったのです。


 変革は可能です。ところで、今日私たちは何を可能だと見なしているのでしょう?メディアを追いかけてみましょう。一方では、テクノロジーとセクシャリティーにおいて、全てが可能であるかのように見えます。月まで旅行に出かけることも可能です。遺伝子工学によって不死になることも可能です。動物であれ何であれとセックスすることも可能です。しかし、社会と経済の領域を見渡してみると、そこではほとんど全てのことが、不可能だと見なされているのです。

 あなたが富裕層の税率をちょっとばかり引き上げたいと言えば、「それは不可能だ、競争力を失う」と彼らは言うのです。あなたがもっとヘルスケアにお金がほしいと言えば、「それは不可能だ、全体主義国家のやることだ」と彼らは言うのです。不死になることを約束されているのに、ヘルスケアに費やすお金をほんの少しも上げることができない世界は、どこかが間違っているのではないでしょうか。

 おそらく私たちの優先順位を、ここできちんと設定することが必要なのでしょう。私たちはより高い生活水準など望んでいないのです。私たちはより良い生活水準を望んでいるのです。たった一つの意味において、私たちが共産主義者(コミュニスト)であるのは、私たちはコモンズに配慮しているのだということです。自然のコモンズ、知的所有権によって私物化されたもののコモンズ、遺伝子工学のコモンズ。このために、このためだけに私たちは闘うべきなのです。


 共産主義は間違いなく失敗しました。しかし、コモンズの問題がまだここにあります。彼らは、ここにいる私たちは非アメリカ的だと言います。しかし、自分たちこそが本当のアメリカ人だと主張する保守派原理主義者たちは、何かによって気付かされなければなりません。キリスト教とは何でしょうか?それは聖霊です。聖霊とは何でしょうか?それは、お互いへの愛で結びついた、信じる者たちによって構成される平等主義の共同体です。そして、自らの自由と責任を所有する者だけが、それをなすことができるのです。

 この意味において、聖霊は今ここに存在します。そして、あそこウォール街にいるのは、涜神的な偶像を崇拝する異教徒どもです。だから、私たちに必要なのは忍耐だけです。私が恐れているたった一つのことは、私たちがいつの日にか家に帰り、一年に一度会うようになり、ビールを飲みながら、ノスタルジックに「私たちは、なんて素敵な時をあそこで過ごしたのだろう」などと想い出に耽るというものです。そういうことにならないように、自らに誓いましょう。


 私たちは、人々がしばしば何かを欲するのに、本当にはそれを望もうとしないことを知っています。どうか、あなたが欲するものを望むことを恐れないでください。

 どうもありがとうございました!



訳者コメント:
 昨日投稿した翻訳を別のソースによって補完したもの。「Don't fall in love with yourself」と呼ばれているようだが、「民主主義と資本主義の結婚は終わった」という題名はそのままとした。

10/19の更新:
 ウェブ上の文章においては、一つの段落に文字を詰め込みすぎるのは、読みにくいと判断したため、段落分けを細かくした。数カ所のみ、前後どちらの段落に入れるか変えた部分があるが、訳文の変更はなし。

10/30の更新:
 今回の更新では、基本的に、この翻訳を元に作成した日本語字幕付き動画を作る際に訳を見直した部分を、今度はこの翻訳そのものに反映した。だが、改めて気づいた部分も併せて変更した。

 つまり、原文URLに書いた通り、二つの英文書き起こしとジジェクのスピーチの動画を参照したのだが、それらのそれぞれ異なる部分に改めて気づき、思ったよりも大変な作業になった。混乱するかもしれないが、現時点での私にできる限りでのベストな訳文がこれ。

 少し煩わしくなるが、注意すべきと思われるいくつかの変更点を以下に書き記す。

変更前:もし規則が破られるのなら、私たちは可能な限り最善の世界に住んでいるわけではないのです。
変更後:タブーは破られました。私たちは最善の可能世界に住んでいるわけではないのです。

 この部分は「rule」とも「taboo」とも聞こえる。参照した二つの書き起こしのそれぞれで違っている。何度もスピーチの動画をリピートしたが判断つきかねた。「taboo」とした方が意味が取りやすいと思うのだが、どうだろうか。

変更前:カフェイン抜き過程(A decaffienated process)です。
変更後:カフェイン抜きプロセス(A decaffienated process)です。

 この部分、「process」とも「protest」とも聞こえる。上と同様に判別がつきかねるが、どうしても「protest」とは聞こえなかった。もし、そうであるならば「カフェイン抜きのプロテスト」ということになる。どちらにしろ、ジジェクはそれを否定している。

変更前:それが意味するのは、もしあなたが資本主義を批判しようとするなら、まるであなたが民主主義に反対しているかのように、脅されかねないということです。
変更後:それが意味することは、あなたが資本主義を批判しようとする際に、まるであなたが民主主義に反対しているかのように、脅されるような真似を許してはならないということです。

 今回の更新で一番重要な変更。ジジェクは民主主義と資本主義が一体であるかのように見えた状態は終わったのだから、資本主義を批判することに躊躇するな、と言っている。それは、これのすぐ後の「民主主義と資本主義の結婚は終わった」という言葉へと続く。

変更前:ありふれたもの(the commons)を望んでいるという意味においてのみ、私たちは共産主義者(communists)なのです。自然の共有権(the commons)。
変更後:たった一つの意味においてのみ、私たちがコミュニストであるのは、私たちはコモンズを望んでいるのだ、ということです。自然のコモンズ。

 この前後の文章はいろいろな含みがあると思うのだが、「the commons」の訳を「コモンズ」で統一することにした。それに合わせて、この部分のみ「共産主義者」を「コミュニスト」に変えた。

10/31の更新
 ジジェクが10月26日付で英ガーディアン紙に寄せた論説「Occupy first. Demands come later(まず占拠せよ、要求はそれから)」を読んだところ、これがこの「ウォール街を占拠せよ」でのスピーチを、ジジェク自身が書き言葉として定着させたような内容のものだということがわかった。

 これで、前回の更新で悩んだばかりの聞き取りの問題が解決した。ごく簡単に言うと、ジジェクは「rule」ではなく「taboo」、「process」ではなく「protest」と書いている。また、他に「まず占拠」に合わせて変えた箇所や、それを読んではっきりした誤りを訂正した部分などが数カ所ある。

 それにしても、ジジェクの発音はとても「protest」には聞こえない。

2012/5/6の更新
 これまで「常に(always)」としていたところを「既に(already)」とするなど、細かな修正。

5/16の更新
 昨年10/30の追記で触れた動画とは別に、二分割されていない動画を、新たにYouTubeにアップロードしたことを機会に、訳文全体の見直し。また、Artamikaさんから訳文についての指摘をいただき、これも反映した。

 ついでながら、先日発売された『私たちは“99%”だ――ドキュメント・ウォール街を占拠せよ』に所載の同じジジェクの講演は、「自分自身に恋するなかれ(Don't Fall in Love with Yourselves)」となっていることを付言しておく。この翻訳は、動画を参照せずにテキストから訳を起こした疑いが濃く、拙訳には参照してない。

# by BeneVerba | 2011-10-17 09:53 | 翻訳 | Trackback(1) | Comments(4)
民主主義と資本主義の結婚は終わった
The Marriage Between Democracy and Capitalism is Over
2011年10月09日 - スラヴォイ・ジジェク
原文:http://occupywallst.org/article/today-liberty-plaza-had-visit-slavoj-zizek/

パート1





 ……2008年の金融崩壊では、ここにいる私たちが昼夜の境なく数週間の破壊活動に及んだとしても達成できないほど、苦労の末に手に入れた私有財産が多く破壊されました。彼らは、私たちは夢を見ていると言います。本当の夢を見ている人というのは、ものごとが永遠にそのままであり続けると考えている人々のことです。私たちは夢を見る人ではありません。私たちは悪夢へと変わろうとしている夢から覚めつつあるのです。私たちは、何も破壊していません。私たちはただ、どのように体制が自壊するのかを目撃しているのです。私たちがみな知っているカートゥーンの古典的なシーンがあります。荷車(cart)が断崖に到達します。それなのに、下には何もないという事実を無視して、進み続けるのです。下を見てそのことに気づき、ようやく落下します。それが私たちがここでやっていることなのです。私たちは、ウォール街の面々にこう言っているのです。「おい、下を見ろ!」と。(歓声)

 2011年の4月、中国政府は、別の現実やタイム・トラベルを含む内容のTV、映画、小説を全て禁止しました。これは中国にとって良い兆候です。すなわちこれが意味するのは、人々が未だオルタナティブを夢見るためには、そうした夢を見ることを禁止するべきだ、ということです。ここではそのような禁止はありません。なぜならこの支配体制は、私たちの夢見る能力を抑圧すらしないからです。私たちがいつも観ている映画を思い浮かべてください。世界の終わりを想像することは容易です。小惑星が地球に激突して、全ての生命体が絶滅するとか、そういったたぐいのものです。しかし、資本主義の終焉を想像することはできません。それでは私たちはここでいったい何をしているのでしょう?ここで、古い共産主義者の時代の素晴らしいジョークを一つお話しさせてください。

 ある男が、東ドイツからシベリアへと、働くために送られました。彼は自分の手紙が検閲官によって読まれるであろうことを知っていました。そこで、彼は自分の友達にこう言いました。「暗号を決めておこう。もし、私から受け取った手紙が青いインクで書かれていたら、私の言っていることは本当だ。もし赤いインクで書かれていたら、嘘だ」。一ヶ月後、彼の友達は最初の手紙を受け取りました。全てが青いインクで書かれていました。その手紙にはこう書かれてました。「ここは全く素晴らしいところだ。商店はおいしい食べ物であふれている。映画館では西側の楽しい映画が観られる。アパートは広々として豪華だ。ここで手に入らないものと言ったら赤いインクだけだ」。

 私たちはこのようなあり方で生きています。私たちには、私たちが望む全ての自由があります。私たちには、ただ赤いインクがないだけなのです。私たちの不自由を明確に表現するための言語が。私たちがそういう風に話すようにと教えられた、自由やテロとの戦いなどについての話し方が、自由を偽ってしまうのです。そして、それがあなたたちがここでしていることなのです。あなたたちは、私たちに赤いインクを授けているのです。

 これには危険もあります。自分自身と恋に落ちないようにしてください。私たちはここで素晴らしい時を過ごしています。だが、覚えておいてください。カーニバルは安上がりなのです。重要なのはその翌日です。私たちが日常の生活に戻る時、そこには何の変化もないでしょう。私はあなたたちに、この日々を「ああ、私たちは若く、全ては素晴らしかった」とか、そういった思い出にしてほしくありません。私たちの基本的なメッセージを覚えておいてください。私たちは、オルタナティブについて考えることを、許されているのだということです。あの規則は破られました。私たちは、可能な限り最善の世界に住んでいるわけではないのです。この先に長い長い道のりがあります。真に困難な問いに我々は直面しています。私たちは、私たちが何を望んでいないか知っている。だが、私たちは一体何を望んでいるのでしょう?どのような社会組織が資本主義の代わりになるのでしょう?どのようなタイプのリーダーを私たちは望んでいるのでしょう?

 覚えておいてください。問題は腐敗でも貪欲でもありません。問題はあなたたちに諦めるようとさせる体制なのです。敵だけに注意するのでなく、既にこの過程を薄めようとしている偽の友にも注意してください。カフェイン抜きのコーヒーを、アルコール抜きのビールを、脂肪抜きのアイスクリームを、あなたが受け取るのと同様なやり方で。彼らはこれを無害で道徳的な抗議運動に変えようとするでしょう。彼らは…[判別不能]…と考えています。私たちがここにいる理由は、私たちがコーラの缶をリサイクルする世界にうんざりしているからなのです……


パート2





 ……スターバックスのカプチーノ。1%の富裕層が、飢えに苦しむ世界の子どもたちのところにおもむく光景は、充分に私たちを慰めます。労働と拷問を外注にした後でも、です。結婚仲介業者が今や私たちの性生活ですら日常的に外注している、その後でもです。

 (あまりにも聞き取りづらいため聴衆の方から)マイク・チェック。

 今や私たちは、私たちの政治的参加もまた長い間外注されるに任せていたことを、理解しています。私たちはそれを取り戻したいのです。もし共産主義が1990年に崩壊した体制を意味するのならば、私たちは共産主義者ではありません。今日では彼ら共産主義者たちが能率的で冷酷無比な資本主義者であることを思い出してください。今日の中国では、アメリカの資本主義以上にダイナミックな資本主義が存在しますが、民主主義は存在しません。それが意味するのは、もしあなたが資本主義を批判しようとするならば、まるであなたが民主主義に反対しているかのように、脅されかねないということです。民主主義と資本主義の結婚は終わったのです。

 変革は可能です。ところで、今日私たちは何を可能だと見なしているのでしょう?メディアを追いかけているだけです。一方では、テクノロジーとセクシャリティーにおいて、全てが可能であるかのように見えます。月まで旅行に出かけることも可能です。遺伝子工学で不死になることも可能です。動物であれ何であれとセックスすることも可能です。しかし、社会と経済の領域を見渡してください。そこでは、ほとんど全てのことが不可能だと見なされているのです。あなたが富裕層の税率を、ちょっとばかり引き上げたいと言えば、彼らは「それは不可能だ、競争力を失う」というのです。あなたがもっとヘルスケアのお金がほしいと言えば、彼らは「それは不可能だ、全体主義国家のやることだ」と言うのです。不死になることを約束されているのに、ヘルスケアに費やすお金をほんの少し上げることもできない世界は、どこかが間違っているのです。おそらくそれは…[判別不能]…私たちの優先事項をここできちんと設定しましょう。私たちは高い生活水準など望んでいないのです。私たちはよりましな生活水準を望んでいるのです。ありふれたもの(the commons)を望んでいるという意味においてのみ、私たちは共産主義者(communists)なのです。自然の共有権(the commons)。知的所有権によって私物化されたものの共有権。遺伝子工学の共有権。このために、このためだけに私たちは闘うのです。

 共産主義は間違いなく失敗しました。しかし、共有権の問題がまだここにあります。それは、あなたたちがここではアメリカ人ではないのだと、告げています。しかし、自分たちこそが本当のアメリカ人だと主張する保守派の原理主義者たちは、何かによって気づかされなければなりません。キリスト教とは何でしょうか?それは聖霊です。聖霊とは何でしょうか?お互いに愛で結びついた信者によって構成される、平等主義の共同体です。そして、自らの自由と責任を所有するものだけが、それをなすことができるのです。この意味において、聖霊は今ここに存在します。そして、あそこウォール街には不敬な偶像を崇拝する異教徒たちがいるのです。だから、私たちに必要なのは忍耐です。私が恐れているたった一つのことは、私たちがいつの日か家に帰り、一年に一回会い、ビールを飲みながら、ノスタルジックに、素晴らしい時を過ごしたことを思い出すというものです。そういうことにならないように誓いましょう。

 わたしたちは、人々がしばしば何かを欲するが、本当はそれを望んでいないことを知っています。あなたが欲するものを望むことをおそれないでください。どうもありがとうございました。



訳者コメント:
 まず何よりもこれが、部分的に撮影されたジジェクのスピーチを、書き起こしたものを、さらに翻訳したものであることに注意してほしい。スピーチの原題は不明。訳はほとんどリンク先の書き起こしを参照した。意味の取りにくい部分は意訳さぜるを得なかった。ぜひ、原文の書き起こしそのもの、映像そのものを参照してほしい。

10/22の追記:
 遅ればせながら、この記事をさらに別のソースで補完したものを既に投稿しているので、この記事の中であらためて紹介しておく。

2012/5/16の追記:
 新たにジジェクスピーチの全体を収めた日本語字幕付き動画を、アップロードしたことを機会に、このエントリの題名を「翻訳:スラヴォイ・ジジェク - 民主主義と資本主義の結婚は終わった [部分訳]」と変更。今後は、10/22のリンクとともに、そちらを参照されたい。

# by BeneVerba | 2011-10-16 21:21 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
マイケル・ムーア - 今日は歴史的な日だ
This is a Historic Day
2011年10月05日 - マイケル・ムーア
原文:http://www.youtube.com/watch?v=MtYnoOpLYAE





 今日は歴史的な日だ。この運動は様々な人々が協力するものになった。なぜなら人々がそれが起こることを願っていたからだ。誰かリーダーのおかげじゃない。下積みの組織のおかげでもない。ただ人々がそう望んだからだ。

 オレは人間マイクロフォンが大好きだ。その理由を言おうじゃないか。なぜなら、これはオレだけの声じゃないからだ。それに、彼だけの声でもないし、彼女だけの声でもない。これがオレたちみんなの声だからだ。

 こういう風にずっとこの運動を続けていこうじゃないか。政治家たちにこの運動を利用させてはいけない。今日ここにいる君たちの一人一人が、ここに来られなかった一〇万人のアメリカ人を代表しているんだ。でも、彼らは君たちがここにいることを喜んでいる。そして、彼らはこれからも自分たちの都市にいるだろう。占拠運動はあらゆる場所にあるんだ。占拠しよう!あらゆる場所を!

 これらのビルの最高階にいる連中――とくにお前だ、ゴールドマン・サックス!――は、数百万の人々の生活を、いや地球上の数億の人々の生活を、破滅させた責任がある。誰かメディアの一人が、オレにこう訊ねてきた。「誰がこの運動を組織したんですかね?」。オレはこう答えてやった。「(ビル群を指しながら)奴らがこれを組織したんだ!」。

 奴らはブーツでアメリカの民衆に蹴りを入れたが、アメリカの民衆は今それをはねのけようとしている。今だ。来年じゃない。今だ!もう充分だ。もういいかげんにしよう(Enough is enough)。企業に支配されたアメリカで、一番汚い言葉は「充分(enough)」ってやつだ。奴らは充分ってことを知らない。強突張りの金持ちになっても奴らは飽き足らなかった。奴らは強突張りの金持ち以上の何者かになろうとした。そして今これを受け取っているというわけだ。

 奴らはおそらく数兆ものドルを盗み取った。だが、オレたちは「オレたちの金を返せ」と言うためにここにいる。いつオレたちの金を返してほしい?いつオレたちの金を返してほしい?(「今すぐ」という声)

 奴らはもうとっくに役割を終えた。奴らが数十億も貯め込んでいて、まだ飽き足らないのはお気の毒様だ。だが、麻薬中毒患者みたいに、奴らはまだ欲しがっている。奴らはもう手がつけられなくなっている。奴らは金銭依存症の問題を抱えているんだ。だからオレたちが介入を行うってわけさ。



訳者コメント:
 10/5の「ウォール街を占拠せよ」運動は、労組や大学生も参加し、それまでで最大の規模になった。このマイケル・ムーアのスピーチは、特に冒頭の部分など、そのことを踏まえていると思われる。

 訳者の聞き取り能力の限界のため、訳はリンク先に書き起こされた英文を参照した。意訳多し。

10/26の追記:
 その後、この翻訳を元にスピーチの動画に字幕を付けたので、このエントリの中で紹介しておきたい。

2012/6/3の変更点:
 記事を整理する中で、この翻訳も見直した。ほとんど変更はなし。「corporate America」という言葉を「企業に支配されたアメリカ」と訳していたが、この言葉には「実業界」という意味と「企業国家アメリカ」という意味があることを知って、一安心。

# by BeneVerba | 2011-10-15 06:44 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)
一〇・一五行動の呼びかけ
October 15th Call to Action
2011年10月14日 - ウォール街を占拠せよ
原文:http://occupywallst.org/article/10-15-call-to-action/


 過去三〇年以上に渡って、一%の富裕層は、我々の人権を侵害し我々の環境を破壊するグローバルな経済システム――新自由主義――を、作り上げてきた。新自由主義は世界的な現象だ。このシステムこそが、あなたにもはや職がない理由であり、あなたが医療費、教育費、食費、住宅ローンをまかなうことができない理由である。

 新自由主義は、盗まれたあなたの未来だ。

 新自由主義は、労働基準を、最低生活賃金を、社会契約を、環境保護を破壊しながら、いたるところに存在する。それは「人類の顔の周囲に触手を巻き付けている大吸血鬼であり、金の臭いのするもの全てを容赦なくその血管に詰め込む」のだ。このシステムは南半球を荒廃させ、グローバルな経済危機――スペイン、ギリシャ、合衆国の経済危機――を引き起こしている。それは貪欲を基盤として築かれたシステムであり、ショックを与えて動揺させることで繁栄するシステムである。

 それは、人類を貧困化することで、一%だけが富むことを許すシステムなのだ。

 このシステムを停めなければならない!
 我々は、民主的かつ経済的に公正な時代の到来を告げねばならない。
 我々は、変わらなければならない。我々は、進化しなければならない。

 一〇月一五日に世界は立ち上がって一つとなり、こう言うだろう。「もうたくさんだ!私たちは新たな始まりであり、分かち合いの繁栄と、尊重と、相互扶助と、尊厳の時代の到来を告げる全戦線における、継続するグローバルな闘いなのだ」。

Actions worldwide



2012/6/3の変更点:
 現在の翻訳基準に合わせて、いくつかの語句の修正。こうした文書を改訳するのはどうかとも思ったが、時間が経ったこともあり、結局は自分に許した。

# by BeneVerba | 2011-10-15 01:25 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)