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スラヴォイ・ジジェクに訊く
Q&A: Slavoj Žižek, professor and writer
2008年08月09日 - スラヴォイ・ジジェク
原文:http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2008/aug/09/slavoj.zizek


 スラヴォイ・ジジェク(59歳)はスロベニア共和国のリュブリャナに生まれた。彼はヨーロピアン大学院大学の教授であり、ロンドンのバークベック人文学研究所のインターナショナル・ディレクターであり、リュブリャナ大学社会学研究所の主席研究員である。ヒッチコックから、レーニン、9・11にいたるまでの30冊以上の広範な書物の著者であり、TVシリーズ『スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド』の司会でもある。


――これまでで一番幸せだったのはどんな時ですか?

 時々、幸せになることを期待したり、そうだったことがあるか思い出そうとしたりするんだが、一度もそういう時はないんだ。

――一番恐れていることは何ですか?

 埋葬された後で蘇生することだね。それが私がさっさと火葬してもらいたい理由さ。

――あなたの最初の記憶は何ですか?

 裸の母。実に嫌な感じだった。

――あなたが一番尊敬する存命中の人物とその理由は?

 ジャン=ベルトラン・アリスティド。二度も退位させられたハイチの大統領だ。彼は、絶望的な状況においてさえ、民衆のために何ができるのかのモデルだ。

――あなたが一番残念に思っている自分の特性は?

 他人の苦境への無関心。

――あなたが一番残念に思っている他人の特性は?

 私が必要でもないし、望んでもいない時に、安っぽい助けを申し出られること。

――これまでで一番恥ずかしかった瞬間は?

 セックスの前に、女性の真ん前に素っ裸で立ってた時。

――資産を除いて、あなたの一番高価な買い物とは?

 新しいドイツ版のヘーゲル全集。

――あなたの一番の秘蔵品は?

 前の回答を見てくれ。

――あなたを落ち込ませることとは?

 アホな連中が幸せそうにしているのを見ること。

――自分の外見についてあなたが一番嫌いなことは?

 それが本当の自分であるかのように見えること。

――あなたの一番魅力的でない癖とは?

 話している時の珍妙なまでに過剰な手の動き。

――仮装服として何を選びますか?

 私の顔に、私の顔の仮面を着ける。そしたら、みんな私の振りをしている誰かで、私ではないと思うだろ。

――一番やましい楽しみとは?

 『サウンド・オブ・ミュージック』みたいな、困惑するほど感傷的な映画を観ること。

――あなたのご両親に恩義を感じていることは?

 何もない。そうだといいと思う。死んだ時にもこれっぽっちも嘆いたりしなかった。

――誰に対して一番謝りたいですか、またその理由は?

 息子たちに対して。充分に良い父親でないことを。

――愛というものをどういう風に感じていますか?

 とんでもない不運、恐るべき寄生体、全てのささやかな楽しみを台無しにする永続化された緊急事態、そういったもの。

――あなたが人生をかけて愛している物もしくは人とは?

 哲学。私は、リアリティが実在し私たちはそれを推察することができると、密かに考えている。

――あなたが一番好きな匂いは?

 腐敗した自然の匂い。腐った樹木のような。

――本気でないのに「愛してる」と言ったことがありますか?

 いつもだ。本気で誰かを愛してる時には、攻撃的で後味の悪い発言をしてしまうんだ。

――あなたが一番軽蔑している存命中の人物とその理由は?

 拷問の手助けをしている医者たち。

――これまでで一番最悪だった仕事は?

 教師。私は生徒たちが嫌いだ。彼らのほとんどは、(全ての人々がそうであるように)アホだし退屈だ。

――これまでで一番失望したことは?

 アラン・バディウが20世紀の「不明瞭な惨事」と呼んだもの。共産主義の悲劇的な失敗。

――もし過去を編集することができるなら、どこを変えますか?

 自分が生まれたことを。私はソフォクレスに同意する。「一番の幸運は生まれないことだ」。この冗談はこう続くんだ。「ただ、それを成し遂げるのはごく少数だ」。

――過去に行けるとしたら、どこに行きますか?

 19世紀初期のドイツに。大学でヘーゲルの講義を受講するために。

――あなたのリラックス法は?

 繰り返し繰り返しワーグナーを聴くこと。

――どれくらいの頻度でセックスをしますか?

 「セックス」という言葉で何を意味するかによるね。もし、それが普通そうであるように、生きているパートナー相手のマスターベーションを意味するのなら、全くそれをしないように努めている。

――これまでで一番死に近づいた時は?

 軽度の心臓発作を起こした時。自分の身体が嫌いになったよ。そいつは私に盲目的に仕えるという義務を拒否したんだ。

――人生を改善するために一つだけ何かするとすれば?

 老衰を回避すること。

――あなたの一番の業績は何だとお考えですか?

 私がやったヘーゲルの良い解釈だと考えている数章。

――人生で学んだ一番のことは?

 人生とは、何も学ぶことのない、馬鹿げた意味のない代物だということ。

――何か一つ秘密を教えてください。

 共産主義は勝利するよ。



訳者コメント:
 少しだけ時間がとれたので、軽めの内容のジジェクQ&Aを翻訳。その割には思ったより時間がかかってしまったが(訳すことは読むことの千倍は時間がかかる)。

 この文章は2008年のものなのだが、なぜか今英語圏を中心としたTwitterで人気で、「ジジェクすごい!」みたいな感想がとびかっていたので、それで知った次第。そのままでお楽しみいただきたい。

11/12の更新:
 昨日の投稿を再チェックし、いくつかの語句の変更をしたが、一つ誤訳があったので以下それを記載。
変更前:「最大の幸運は生まれたことにあるのではない」。この冗談はこう続くんだ。「ごく少数だけがそれで成功することだ」。
変更後:「一番の幸運は生まれないことだ」。この冗談はこう続くんだ。「ただ、それを成し遂げるのはごく少数だ」。

 時間がないため、再チェックに充分に時間をかけることができなかった。ミスがあれば申し訳ない。後で改めてチェックしたい。

[同日の追記]
 その後夕方に再チェックをやる時間が持てた。ごく少数の訳語を変更したが、誤訳は見つからず。こういうやり方は一人でやるWikiのようなものだと考えている。

by BeneVerba | 2011-11-11 22:14 | 翻訳 | Trackback | Comments(0)