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〈資本主義〉対〈気候変動〉
Capitalism vs. the Climate 2011年11月09日 - ナオミ・クライン 原文:http://www.thenation.com/article/164497/capitalism-vs-climate?page=full ――不可避の未来に希望を広げるために 気候保護派の一部は、融和戦略に対して激しく押し返している。ティム・デクリストファー――石油とガスの賃貸のオークションを妨害したためにユタ州で二年の投獄の判決を受けた――は、五月に、気候保護活動は経済を転覆させるとする右派の主張に対してこう述べた。「私たちはその非難を甘んじて受けなければならないと思う」と、彼はインタビュアーに語った。「私たちは経済を破壊しようとしているわけではない。だが、そう、私たちはそれを逆さまにひっくり返すことを望んでいる。私たちは、何を変えたいのかという、自分たちのヴィジョンを隠そうとすべきではない――私たちが創造したいと願っている世界は健康なものだ。私たちは小さな移行を求めない。私たちが望むのは、経済と社会のラディカルな見直しだ」。さらに彼はこう付け加えた。「私たちがいったんこのことを語り始めれば、予想よりも多くの仲間たちを見つけることができると思う」。 デクリストファーが、気候保護活動が深い経済的な変容と結びつくという、このヴィジョンをはっきりと表明した時、それは確かにほとんどの人にとって、白昼夢のように聞こえた。しかし、その五ヶ月後、「ウォール街を占拠せよ」の人々が数百の都市で広場や公園を占拠すると、それは予言的に聞こえるようになった。アメリカ人の大部分は、実際的なものから精神的なものまで多くの面において、この種の変容をずっと求めていたのだ。 この運動の初期の文書では、気候変動は後知恵のような扱いこそ受けているが、環境保護意識は、当初からOWSに織り込まれていた。ズコッティ公園での台所の排水を植物の灌漑に用いる洗練された「排水(gray water)」濾過システムから、オキュパイ・ポートランドの寄せ集めの共同体庭園まで。オキュパイ・ボストンのラップトップ・コンピューターと携帯電話は、自転車発電機で電力を供給され、オキュパイDCは太陽光パネルを設置した。また、OWSの究極の象徴である人間マイクロフォンは、まさしく脱二酸化炭素の解決策に他ならない。 そしてまた、新しい政治的つながりが形成されつつある。石炭産業に出資しているバンク・オブ・アメリカを標的とする「熱帯雨林行動ネットワーク(Rainforest Action Network)」は、差し押さえに関して銀行に狙いを定めているOWSの活動家たちと、共通の大義を生み出した。反水圧破砕法の活動家たちは、ガスが流れるようにするために、地球の岩盤を破壊しているのと同じ経済的モデルが、利益が流れるようにするために、社会的な岩盤を破壊していると指摘した。そして、キーストーンXLに反対する歴史的な運動は、この秋に、気候保護活動を、ロビイストの事務所から決定的に引きずり出し、街頭へと(また監房へと)連れ出した。反キーストーンの運動家たちは、汚染度の高いタールサンド石油を、この国でももっとも脆弱な土地を越えて運んでいるパイプラインには「限定的な環境的逆行インパクト」があると、国務省に結論させた腐敗したプロセスを、企業による民主主義の乗っ取りに関心がある全ての人は、これ以上見つめる必要はないと述べた。350.org のフィル・アロノーが言ったように、「もしウォール街がオバマ大統領の国務省と国会議事堂を占拠しているのなら、今度は民衆がウォール街を占拠する頃合いだ」。 だが、これらのつながりは、企業権力の共有された批評を超えている。占拠者たちが、私たちのまわりの全てを破壊するそれを取り除いて、どのような種類の経済を築くべきかを自らに問うとき、多くの者たちは、この一〇年間で根づいてきたグリーン経済オルタナティブのネットワークから、インスピレーションを受けることだろう。その共同体管理による再生可能エネルギー・プロジェクト、共同体支持による農業と農民市場、実体経済を生き返らせた経済的地域化政策、そして協同組合部門の中に。既にOWSのあるグループが、この運動初のグリーン労働者の協同組合(印刷機)を発足させようと計画している。地域の食料活動家たちは、「食料システムを占拠せよ!」という呼びかけを行った。そして一一月二〇日には、共同体の建物のためにクラウドソースを用いてソーラーパネルを買う試み「屋上を占拠せよ」が始まった。 これらの経済モデルの利点は、排出を削減しつつ、雇用を創出し、共同体を生き返らせるだけでない。それらはまた、そうすることで体系的に権力を分散させるのだ。これは一%による、一%のための経済へのアンチテーゼである。南ブロンクスのグリーン労働者協同組合の創設者の一人、オマル・フレリア(Omar Freilla)は、広場や公園で数千の人々が参加している直接民主主義の経験は、多くの人にとって、「自分が持っていたとは知らなかった筋肉を使うようなものだ」と語る。そして、彼が言うには、人々はさらに民主主義を求めている。集会においてだけでなく、共同体の計画や職場においても。 別の言葉で言えば、文化は急速に移行しつつある。そして、これがOWS運動を真に特異なものにしている理由である。「貪欲がはびこっている」とか「あなたを気にかけている」といったプラカードを掲げた占拠者たちは、初めから、彼らの抗議運動を、狭い政策的な要求に閉じ込めないことに決めた。その代わりに彼らが選んだのは、経済危機を作り出した原因である蔓延する貪欲と個人主義の基礎となる価値観に狙いを定め、その一方で、お互いを取り扱い、自然界と関わり合うための根本的に異なるやり方を――非常に目立つ方法で――体現することだった。 文化的価値観を移行させようとするこの意図的な試みは、「現実」の闘争からの逸脱ではない。私たちがその到来をもはや不可避にした困難な未来において、全ての人に平等な権利があり、深い同情の能力があるという確固とした信念は、人間性と野蛮の間に立つ唯一のものとなるだろう。気候変動は、私たちに厳格な締め切りを課すことによって、まさにこの重大な社会的生態学的変容のための、触媒としての機能を果たすことができる。 結局のところ、文化とは流動的なものだ。文化は変わることができる。常に文化の変容は起きてきた。ハートランド会議の代表者たちもこのことを知っており、それこそ彼らが、自分たちの世界観が地球の生命にとって脅威であることを示す証拠の山を隠蔽しようと、固く決意している理由なのだ。残りの私たちに課せられているのは、同じ証拠に基づいて、全く異なる世界観が私たちの救済となることを信じることである。 訳者コメント: 彼女のTwitterによれば、ナオミ・クラインの次回作の一部もしくはその草稿のようなものであるらしい「〈資本主義〉対〈気候変動〉(Capitalism vs. the Climate)」と題された長文論説の全訳を分割して公開。文字数制限のためコメントは割愛。目次はこちら。
by BeneVerba
| 2012-06-03 11:08
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